稲作農業と大手保険会社の代理店業との兼業。
年中同じ味で提供できる設備を備え、8ha の農場でできる米の全量を、千葉エコ栽培の基準に基づいて作っています。
「挑戦」をキーワードとする鈴木さんは、従来の稲作農法から、無代かけ移植を始めました。無代かけ移植とは、耕耘砕土後に入水し、しばらく放置した後、代かきを行わずに移植を行う栽培法です。現在は、除草などの理由から全量無代かけにはしていません。
無代かけ移植への挑戦
鈴木さんの圃場は、機械化に向いていませんでした。作土層の特性から、そのまま機械を走らせると沈没してしまうからです。当初は作業性を上げるため、機械化を理由に無代かけ移植を始めましたが、後から生育などについても良い変化が見られました。水が入った状態で撹拌していないので、土にすきまがあり、稲が根を良く張り、生育が良くなりました。その結果、肥料を減らすことができました。
無代かけ移植に挑戦することに対して、不安はあったといいます。約5年の思考期間に、すでに無代かけ移植を行っている農家を数回訪ね、実行までの段取りを考えました。農法の変更は自分だけの問題ではありませんでした。両親を説得することが大変だったそうです。
約5年を経てやっと実現に漕ぎ着けたものの、最初の3年ほどはすべてが手探りでした。この地に合う方法を、地道に探して来ました。
鈴木さんは言います。
「今までと同じことやっていたら、それまで以上にはならないし、次の可能性も見えない。失敗しても必ず次に反映できる。やらないよりはやったほうがいい。」
また、年々下がる米価にも対応できる経営をするためには、田一反あたりの利益を上げなければいけないそうです。そのためには、生産効率を上げる必要があります。 挑戦をし続ける鈴木さんは、さらに作業効率を良くするために、種を直接田にまく直接播種への挑戦を考えているといいます。さらに利益を上げるために、輸出についても考えているそうです。
鈴木さんの米作りへの思い
鈴木さんは、米の生命力を活かすことと、それができる土作りを心がけています。過剰な肥料や除草剤は必要ありませんが、放任栽培では絶対にいいものは作れません。米が最大限に力を発揮できるように、そっと手を差し伸べます。
そうして自分たちが作った米を、よろこんで食べてくれる人がいて、おいしいと言ってくれることが一番のやりがいだそうです。
大震災の影響を受けて
2011年3月11日の大震災で、最も影響を受けたのは水です。取水施設が震災でダメージを受けて通常運転ができていない上に、節電で100%の運転をしていません。しかし、
「ここは液状化もなかったし、機械も壊れてないし、津波で塩も入ってないから本当に恵まれている。」
と鈴木さんは言いました。それに加え、米の放射能が心配です。風評被害もあり、今後どのように米を売っていくのかが課題です。今回の地震で、日本の米の大部分を生産していた関東以北が大ダメージを受けました。
「災害の負担がすべて生産者持ちとなると、今の米価ではとても生きていけない。」
今、私たち消費者にできることはなんでしょう。私たちは震災による弊害を受け入れ、検査を通過した米については、値段が多少高くなっても購入しておいしく食べ続けるべきではないでしょうか。
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